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神戸キラリ!KOBE街盛り上げTAI

神戸を映画の街にしよう!

<vol.1>かしのたかひと × 白羽 弥仁

三宮、元町、新開地といった繁華街。神戸港に六甲山。魅力あふれるスポット・アイテムをたくさん持っている神戸。
このコーナーでは、「まいぷれ」編集部がキャッチした、神戸の街を盛り上げる活動・イベント等々を不定期に紹介していきます!

樫野 孝人(かしの たかひと)
株式会社アイ・エム・ジェイ(IMJ)顧問。兵庫県神戸市生まれ。神戸大学経済学部卒。株式会社リクルートを経て、2000年にIMJの代表取締役社長に就任。子会社の株式会社IMJエンタテインメントを設立。映画制作に携わる。代表作は、「NANA」(2005)、「眉山」(2007)、「MW」(2008)など。神戸在住。
白羽 弥仁 監督 (しらは みつひと)
映画監督、脚本家。兵庫県芦屋市生まれ。日本大学芸術学部卒。代表作に「セピア・タウン」(1984年)「She's Rain」(1993年)「能登の花ヨメ」(2008年)など。TVCM、TVドキュメンタリーの制作多数。日本映画監督協会会員。神戸在住。

[1] 神戸は映画発祥の地

白羽 弥仁(しらは みつひと)監督
白羽 弥仁(しらは みつひと)監督
白羽:神戸出身の映画人は多いですけど、石原裕次郎が須磨区の生まれですね。
かしの:そうだったんですか。うちの近所だ。
白羽:かれは神戸を舞台にした「赤い波止場」(※1)という映画に出演してましてね。白いスーツを着て延々と神戸港を歩く姿は、何度見てもほれぼれしますよ。
かしの:生まれ故郷に凱旋して撮影した映画だったんですね。
白羽:二枚目といえば、「007は二度死ぬ」(※2)でジェームズ・ボンド役のショーン・コネリーが格闘するシーンも神戸ロケでしたね。
かしの:なるほど。後世に語り継がれる作品が、不思議に神戸で撮られてたりしますよね。そういう意味では、白羽監督の「She's Rain」(※3)も震災前の神戸で撮影されたとても貴重な映画だと思います。
白羽:僕の中でも特別な意味を持っている作品ですね。今はフィルムの中にしか残っていないけれど、古き良き神戸の街並みはもっと大切にされなきゃいけない。震災で壊れてしまった建物は仕方ないとしても、残ったものまで簡単に壊して新しくしてしまうでしょ。そんなことをしていたら、神戸らしい情緒もどんどん失われていくだけです。

かしのたかひと
かしのたかひと
かしの:そうですね。ハコモノ行政優先だと、神戸の魅力はどんどん低下していきます。いくら立派な建物をいくら作っても本当の復興とは言えない。神戸の本当の魅力は人々の交流にあるんです。世界中からどんどん人が集まって、なにかとんでもなく面白いことが起こってしまう。そんな神戸を復活させるためにも、映画という文化は大きな力を発揮してくれると思っています。
白羽:同感ですね。亡くなられた映画評論家の淀川長治さんがチャップリンと初めて会ったのも神戸ですしね。さかのぼって新開地に映画館が軒を並べていた時代から、神戸には世界中のスターがやってきていたんです。居留地では洋画が頻繁に上映されていて、神戸が映画発祥の地といわれる所以はそこにあります。そんな背景から日本で最初に洋画の配給会社を置いたのも神戸で、その後の洋画ブームの発火点になったわけです。
かしの:21世紀の神戸がもう一度その発火点になれたら、すごいことですね。僕も映画プロデューサーをやってきましたからね。燃えてきました(笑)。

[2] 映画づくりを応援したい

かしの:神戸の街は映画のロケ地としても有名ですが、地元の方は意外に知らないんですよね。先日、KISS-FMで大久保かれんさんの番組に出演したときも、「ジャッキー・チェンの映画を神戸で撮ったのに、それを上映する映画館が神戸で2館しかないのよねー」なんて話をしてたところです。
白羽:神戸人はそういうところがちょっと冷たいんですよね(笑)。ロケ地としてはおそらく日本一なんだけれども、映画づくりそのものに対する思い入れがイマイチ盛り上がってこない感じですかね。
かしの:ひとつは映画人を育てることが大事ですよね。大学や専門学校がもっと映画学科を新設して、行政がそれを応援するというカタチもあると思います。
白羽:でも神戸の人は「映画つくって世界にはばたこう」なんて思ってないでしょ。

かしの:いや、それはちょっと違うと思ってて、はばたき方がわからないだけじゃないかと。もちろん個々に強烈なモチベーションが必要ですけど、それをフォローする仕組みをしっかりつくれば、可能性は大きく広がると思ってるんです。たとえば、神戸市近隣の大学、専門学校や高校で映画作りを推奨して、制作費や機材をサポートする制度があったら若手のクリエーターはどんどんいい作品をつくりますよ。僕は商業的な映画を手がけてきましたが、それも含めて映画というのはその街の文化度を高める側面もあると考えています。
白羽:東京芸大がそういうシステムを導入してますね。北野武監督や黒澤清監督(※4)が直接に指導しながら、どんどん学生につくらせてどんどん映画館にかけていく。そうしてたしかに有望な若手が育っています。
かしの:もう少し幅広く考えれば、映画づくりに真剣に取り組んだ学生たちというのは、一般社会で通用する基礎的なスキルを身につけることができると思うんです。カメラや照明などの専門分野にかぎらず、法律や経済、営業や人事など、もし映画の世界に進まなかったとしても他のフィールドで役に立つ要素が、映画づくりにはぎっしり詰まっているからです。

[3] 神戸で国際的な映画祭を

かしの:もうひとつ、映画で神戸を世界にアピールしたい仕掛けがあります。それは、神戸ならではの映画祭を開催することです。
白羽:それ、かしのさん絶対やってくださいよ。実はぼくのところにもよく話がくるんですけど、たいていどこの市長さんも「うちでカンヌみたいな映画祭やりたい」とおっしゃる。でもね、お役所の人は誰も映画ビジネスなんて知らないんですよ、映画ファンという程度でね。かしのさんが神戸でやってくれるなら、全国一の適任者ですよ、ダントツで。だって、カンヌ、ベルリン、ベネチア世界三大映画祭に実際に参加している行政責任者なんていないですもん(笑)。
かしの:たとえば、ぴあフィルムフェスティバルのような若手の登竜門か、ショートショートフィルムフェスティバル(※5)のようなものも、神戸のイメージにはぴったりですよね。
白羽:映画祭はいいなあ、だって映画だからこそ、あの夕張市(※6)にデニス・ホッパーがきちゃうんですから。

[4] 世界に誇れる映画の街に

かしの:もっと多くの人が日常的に映画を観られる環境もすごく大事だと思うんです。市民がいい映画をたくさん観て、映画好きになってくれれば、本当の意味で神戸が映画の街として発展していくわけですから。
白羽:封切りの映画だけじゃなく、神戸名画座のような映画館で、「アラビアのロレンス」や「七人の侍」がいつでも見られて2本1,000円とかもいいですよね。年配の方にとっても忘れられない映画は多いだろいうし、若い人たちにももっと古い名画を観て欲しいし。地方にはそういう映画館が少ないけど、これからはもっと必要ですよね。
かしの:白羽監督は映画の生き字引なんだから名画座の館長もいけますね(笑)。
白羽:逆に世界中から才能ある映画人を留学生として受け入れるのもいいですよね。神戸人はそういう人たちと交流するのはうまいから。
かしの:それは是非やりたいですね。新しいものを入れないと、街がどんどん閉じてしまいますからね。新しいものと古いものが混じりあうことで、その街の文化がしっかり形成されてくるんです。
白羽:そうなれば、ニューヨークのSOHO地区みたいに文化的な街が出現して、神戸が世界に誇れる映画の街として復活するかもしれないですね。

[5] 神戸のプロデューサーとして

白羽:神戸という土地柄は、もともと映画をやるにはもってこいの土地です。かしのさんがその旗振りをやってくれるなら、全国から勝手に映画人が集まってくるでしょう。映画ビジネスを神戸で展開したいという人々からたくさんアプローチがくるようになれば、神戸は自然に映画の街として活況を呈してくると思いますよ。いまの神戸市ではできないジャッジや発展のさせ方を提示できる人ですからね、かしのさんは。
かしの:映画もそうだけれども、事業でも市政でも、なにか面白いことを実現するとき大切なのは、「企画」「脚本」「キャスティング」だと思うんです。神戸で言うと、デザイン都市とかクリエィティブシティーとかのテーマは非常に面白いので、あとはどんなどんな戦略・脚本で、誰がやるのか、という具体的なツメと実行力ですよね。
白羽:映画もタイトルだけインパクトがあって、中身がないとお客さんが来ないしね(笑)。
かしの:コンセプトを具現化するために、ベストな人材をフラットにキャスティングし、神戸の人材と世界中の人材がコラボレーションすると、きっと素晴らしい成果が上がると思います。
白羽:いまの行政のプロデューサーが聞いたら耳が痛いんじゃないの(笑)。とにかく権威主義に凝り固まったら新しいことはできない。神戸を映画の街にするために、自由な発想で是非頑張ってくださいね。


※1 1958年日活。枡田利雄監督。神戸を舞台に裕次郎扮するチンピラが殺し屋相手に活躍するアクション映画。出演:石原裕次郎、北原三枝、岡田眞澄、二谷英明清水マリ子ほか

※2 1967年公開。007シリーズ5作目ではじめて日本が舞台となった貴重な作品。出演:ショーン・コネリー、丹波哲郎、若林映子、浜美枝ほか

※3 1993年公開。白羽弥仁監督。この映画はほぼ全編が神戸や阪急沿線でのロケで構成されているため、阪神・淡路大震災前の貴重な建物や町並みが映像に残された。主題歌は大江千里の「砂の城」。この曲は大江千里のアルバム「六甲おろしふいた」に収録されている。

※4 映画監督、脚本家。神戸市生まれ。東京藝術大学大学院映像研究科教授。作品に「復讐」「勝手にしやがれ」「蛇の道」「蜘蛛の瞳」「CURE」「アカルイミライ bright future」「叫」「トウキョウソナタ」など多数。

※5 実行委員代表は俳優の別所哲也。25分以内の短編映画を対象とし、短編映画祭としてはアジア最大級。アカデミー賞の公認映画祭として認定されており、グランプリ受賞作品は翌年のアカデミー賞短編部門の候補作品となる。

※6 1990年から北海道夕張市で開かれている「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」。世界的な映画祭として高い評価を得ている。この映画祭がきっかけで生まれた映画作品も多い。

<かしのたかひと プロデュース作品>
■製作総指揮・エグゼクティブプロデューサー・製作
 蟹工船(2009) 監督:SABU
 きみにしか聞こえない(2007) 監督:荻島達也
 ただ、君を愛してる(2006) 監督:新城毅彦
 幸福の鐘 (2002)  監督:SABU
 とらばいゆ Travail (2001) 監督:大谷健太郎
 DRIVE (2001) 監督:SABU

■プロデューサー
 実験映画 (2000)  監督:手塚眞
 MONDAY (2000) 監督:SABU
 Juvenile ジュブナイル (2000) 監督:山崎貴

■その他
 MW -ムウ-(2009) 監督:岩本仁志
 カフーを待ちわびて (2009) 監督:中井庸友
 イキガミ(2008) 監督:瀧本智行
 グーグーだって猫である(2008) 監督:犬童一心
 DIVE(2008) 監督:熊澤尚人
 砂時計(2008) 監督:佐藤信介 
 眉山(2007) 監督:犬童一心
 NANA (2005)  監督:大谷健太郎
 この胸いっぱいの愛を (2005) 監督:塩田明彦
 ジョゼと虎と魚たち (2003)  監督:犬童一心
 バトル・ロワイアル (2000) 監督:深作欣二