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元町映画館☆特集

手塚治虫 禁断の問題作『ばるぼら』

“映像不可能”とも呼ばれた本作。それだけでプレッシャーなはずなのに、期待を超える映像のカッコよさ。

原作、手塚治虫。監督は手塚眞さん。主演、稲垣吾郎さん、二階堂ふみさん。
“映像不可能”とも呼ばれた本作。それだけでプレッシャーなはずなのに、期待を超える映像のカッコよさ。


ーこんなお話ー

小説家・美倉洋介はある日、新宿駅の片隅でホームレスの少女ばるぼらに遭遇する。酒に酔っていた彼女を思わず家に連れて帰り世話する美倉。彼女のおかげで小説の仕事が捗る美倉。一方で彼は異常性欲に悩まされており幻覚を見ることもあった。ばるぼらの魅力に取り憑かれた彼は、彼女なしでは生きていけない人生になっており…。

生きるって面白いけど、大変よな…というのが初めの感想だ。まず漫画を映画にする…これは本当に体力の要ることだろう。映画を作るだけでもすごいことなのに、原作の雰囲気を崩さずに映像を作る。一方で作り手の独自性も発信しなければならない。全てがそうではないが、観る側の期待は0ではないと思う。

本作、とにかく映像がカッコ良い。映画の内容はフィクションだが、天才と呼ばれる男性と不思議な魅力を持つ女性。この人物は世界を探せば必ずいるはずだ。そんな彼らが出会い、日本で生きていく。それだけでも幻想、ある種、夢物語のような話。しかし観る側を引きこむのはカメラワークのカッコよさだと思う。撮影監督はウォン・カーウァイ監督作品などでも知られるクリストファー・ドイル。『欲望の翼』や『ブエノスアイレス』などでも知られる。そんな彼が撮影をする。カッコイイに決まっている。

舞台は新宿駅、美倉の家、謎のクラブハウス…などとありとあらゆる場所で撮影される。無機質なビルや自然に囲まれた豪邸。真っ暗…環境は様々だが、どれを取っても美倉とばるぼらがかっこよく
写っている。

特に好きなシーン。美倉がばるぼらに溺れて全てを失ったある日。編集者の女性が美倉の家で食事をとる。散らかっていた部屋を掃除し、テーブルに並べられた料理。色のないキッチンから運び出された料理を並べ、食事をする瞬間、鳥肌が立つ。幸福感が伝わらない食事の時間。緊張というよりも、不気味さが際立つ。食事を取るよりもばるぼらとの快楽の時間に満足を覚えて、自分を見失っている美倉と健全な編集者、相対する彼らをカメラはとらえている。

そうやってこの映画の世界にどんどんのめり込んでいく自分がいた。観るよりも、作品の中に入っていく…そんな感じだ。でも、東京っていう街に住む人が観ると本作はどんな映画に観えるのだろうか。この時点で『ばるぼら』の世界観にどっぷり浸かっている。某映画「寅さん」が老若男女に愛される映画であれば、二階堂ふみさん演じるばるぼらは大人版の寅さんか。人をダメにする、人を救うかどうかは捉え方次第。

この大人たちの饗宴の世界に自分もいつか仲間入りするのか。ばるぼらのような人に出逢ってしまうのか。

カッコいいカメラワークの中で自由にかっこいい大人たちが芝居をしている。それを観るだけで価値があります。ぜひスクリーンでお楽しみください。
ばるぼら
監督:手塚真/出演:稲垣吾郎、二階堂ふみ
2019年/日本、ドイツ、イギリス/100分/配給:イオンエンターテイメント

上映スケジュール
1/16(土)~1/22(金)17:20~