地元暮らしをちょっぴり楽しくするようなオリジナル情報なら、神戸市東灘区の地域情報サイト「まいぷれ」!
文字サイズ文字を小さくする文字を大きくする

神戸市東灘区の地域情報サイト「まいぷれ」

元町映画館☆特集

アニメーションの神様、その美しき世界 vol.2&3 川本喜八郎、岡本忠成監督特集上映

アニメの国宝を再発見する

ストップモーション(コマ撮り)をご存知でしょうか。静止している物体を1コマずつ動かしながら、それをつなげていく。セル画を使ったアニメーションとは違う大変さ、そして魅力を持った撮影方法です。最近ではクレイアニメや有名フィギアを駆使し、個人で映像作品を制作、SNSなどで発信する方々が増えてきました。今回はそのコマ撮りを含めて日本のアニメーション発展に大きく貢献した映像作家・川本喜八郎、岡本忠成の特集上映をご紹介します。

川本喜八郎(1925年1月11日~2010年8月23日)
1925年東京・千駄ヶ谷生まれ。旧制横浜高等工業学校(現横浜国立大学)建築学科を卒業。1946年、東宝撮影所美術部勤務。フリーとなって1951年、劇作家の飯沢匡らと共に人形芸術プロダクションを設立し、本格的に人形制作を始める。持永只仁作品の人形作りにも携わりながら、1958年CM制作会社シバ・プロダクションの設立に参加。1963年にはチェコにわたりイジー・トルンカに師事する。1968年、第一作『花折り』を発表。日本の古典芸能に取材した題材で独自の表現を確立し、NHKの人形劇「三国志」など人形美術作家としても幅広く活躍。岡本忠成の遺作『注文の多い料理店』は川本の監修で完成した。国内各賞の他、海外映画祭でも多数受賞。

岡本忠成(1932年1月11日~1990年2月16日)
大阪府豊中市生まれ。大阪大学法学部卒業、一旦就職した後、日本大学芸術学部映画学科に編入学。日本の人形アニメーションの礎を築いた持永只仁のMOMプロダクションに入社。アメリカから受注した作品の制作に携わる。1964年に株式会社エコーを設立。第一作、星新一のショート・ショートが原作の「ふしぎなくすり」から人形アニメーションの世界に新風を送る。その後、木彫、和紙、毛糸、皮、粘土などの素材、フォークソングや童謡などの音楽、義太夫節や岩手弁などの語りを用いた多様な手法と表現で、民話世界や社会風刺など多彩な作品を作り続け、文化庁芸術祭大賞をはじめ国内外で多数受賞。没後、その功績に対して毎日映画コンクール特別賞が贈られた。
今回は二人の生涯の作品から10本を特集上映。その中から個人的によかった作品をご紹介。

川本喜八郎
『道成寺』(1976年)

「今昔物語」の「安珍清姫」や能の同名演目を題材をもとに、川本喜八郎独自のアニメーションを確立した作品とも言われており、19分の作品とは思えない濃密さ。愛した僧に裏切られた寡婦が化け物になっていく様を描いた本作。狂った寡婦の表情と、必死に逃げ惑う僧の表情はまるで実写ドラマのよう。いや、リアルでも演じきることができないかもしれません。さらに本作に命を与えているセット、色の数々。初めは幸せそうな二人の関係が崩れ、最後には憎しみに変わる。幸せの赤から、怒りの赤へ。寡婦の髪の毛の黒もおどろおどろしさをひきたてます。そして何よりすごいのが化け物。架空の生き物が縦横無尽に動きまわります。あのヌルヌルさ。画面いっぱいに広がる大胆な動きをコマ撮りで表現するのは相当な研究がなされているのではないでしょうか。現代は撮影に合わせて必要な機材が簡単に手に入る時代。本作の制作年は1976年。今観ても「キレイ、かっこいい」シーンの数々はすごいの一言。まさに国宝。ずっと大事にしたい。何世代に渡っても観続けたい作品の一つになりました。

岡本忠成
『虹に向かって』(1977年)

「大河ドラマやん」。そう思ってしまうのも無理はないほどの大掛かりなセットの数々。
こんなお話。
激流の谷に隔てられた二つの村。川を挟んで向き合う内にある男女が恋に落ちた。彼らは川下で落ち合う。頭上には虹が広がり、いつしか彼らはあの虹のような橋をかけるのを夢見るのだった…。
橋をかける作業。そこまで緻密にするのかっていうくらい、木と木を繋ぐ木の縛り具合や橋になるまでの工程が見ていて楽しい。それに加え、建設費のために必死にはたらく男女や村の人々。働きすぎ感は否めないけど、目的のために必死になる姿は人形アニメといえど応援したくなる。人形1体1体に魂みたいなものを感じる。これが生きているってことなのかな。公式によると岡本忠成の作風には全体的に子ども向け作品の分野で斬新な表現を追求したと言われる。本作は「働くこと」が夢の実現につながることを子どもたちに訴えたかったのか。映像から発せられるメッセージを読み解くのも面白い。公開当時、本作の視聴者が何を思ったのかも非常に気になる。私は純愛映画と公開当時の時代を少々批判しながら描いた作品ではないかと思います。

「映像は時代を映す鏡」なんて言葉がありますが、今回の10本は撮り方は似ていても、魅せかたが全く違う。エンタメもあれば、そうは見えない作品もある。ぜひあなたの感性でこの映像を受け止めて、アニメーション、映像の持つ可能性を再発見してもらいたいです。
アニメーションの神様、その美しき世界 vol.2&3 川本喜八郎、岡本忠成監督特集上映

◆川本喜八郎作品(5作品80分)
『花折り』(1968年/14分)
『鬼』(1972年/8分)
『詩人の生涯』(1974年/19分)
『道成寺』(1976年/19分)
『火宅』(1979年/19分)

◆岡本忠成作品(5作品78分)
『チコタン ぼくのおよめさん』(1971年/11分)
『サクラより愛をのせて』(1976年/3分)
『虹に向って』(1977年/18分)
『注文の多い料理店』(1991年/19分)
『おこんじょうるり』(1982年/26分)

上映期間
6/12(土)~6/25(金)