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元町映画館☆特集

自分ごとの、家しごと。『<主婦>の学校』

平等ってなに? 普通ってなに?

平等ってなに?
普通ってなに?


みたいなことを高校生の頃に抱いていた私。その当時はまさか自分が映画館スタッフとして働いているとは思いもしないわけですが、こうして作品紹介ができること嬉しく思います。今回は家事を教える学校の姿を追ったドキュメンタリー映画です。もし自分がこの学校の存在を知っていれば、通いたいなぁ。環境は人を大きく変える要因になる。知るって大切だな。

こんなお話。
舞台は北欧アイスランドの首都レイキャビクにある小さな家政学校「The School of Housewives」。アイスランドは2021年世界経済フォーラム公表のジェンダーギャップ指数ランキングにて12年連続1位のジェンダー平等国。ちなみに日本は120位(156カ国中)。この100以上の差は何なのか。12年連続ってすごいよな、やっぱり。そして日本よ……。と話はそれるが、そんな「主婦の学校」では調理や洗濯、アイロンがけなど生活全般に必要な家事を教えてくれる場所だ。1942年創立後、形を変えつつも、1990年代には男子学生を受け入れ、男女共学になった。現在は家事だけでなく、食品ロスなど、現代社会を生きる上で求められる知恵も与えてくれる。開かれた環境で学ぶ学生らの姿をカメラは追った。

まず驚いた。この学校に通う学生さんの考え方に。
前のめりに学ぼうとする学生もいれば、「だらしない主婦になっても良いのでは」という考えを持った学生も。早起きして夜は寝る。そんな規則正しい生活は学校の中では当たり前なのだろうけど、私から見れば毎日がキラキラしているように思える。ベリーケーキやジャムを作るために自分たちで果実を摘みに行ったり、編み物の授業では針を通すところ始める。他にはテーブルマナーやアイロンの使い方など家事のありとあらゆることを同級生と一緒に学ぶ。意欲ある学生が集まっているからだろうか、参加者もみんな黙々と家事に取り組む。わたしの学生時代の家庭科の授業とは大違いだなと思った。みんなぺちゃくちゃ。なんか集中していない。ある程度の強制は必要なんだろうけど、楽しいっていう実感はなかったな。
家事って大変なところはもちろんあるけれど、この映画を観ると楽しいもんじゃん!と気付かされる。
ある卒業生が言う「分からないままやってれば、生活がつまらなくなる」。まさにその通りだと思いました。「なぜするのか?」「それをするとどんな効果があるのか?」。表面的なことだけでなく、学んだ知識を活かせるように基礎も伝えてくれる。中には面白くない行程もあるかもしれない。でもその点を増やしていくことでいつか線になる。学生に気づかせるように制度がなっています。

物語はそんな家事との向き合い方から、中盤以降は<主婦>とは何か?という本質に近づいていきます。それを話す上でなくてはならないのが男子学生の存在。卒業後にアイスランドの環境・天然資源大臣になった男性は語ります。「自分の面倒は自分でみたかったから」。この言葉、ほんといろんな人に届いて欲しい。漢字で言うと「自立」っていう言葉になるのかな。そして「自分は面倒みれてる?」と問いなくなる。別の卒業生は教員から「あなたは幸運な男性になるわ!」と言われるらしい。アイスランドは褒めるのが上手な人が多いのだろうか。「かっこいいじゃなくて」「幸運」っていう言葉選びがカッコいいよね。そして自立することを学んだその学生は生き生きとした顔で巣立っていく。

全編通して、日本とはまるで家事の考え方が違うんだろうなって思う。勉強できる、良い学校に通うってことはもちろん大事だけど、それがどう生活に活きていくのかを学ぶこの主婦の学校は「学ぶ」場所を運営するすべての人に知ってもらいたい。主婦といえば、家事。そんな=(イコール)だけの関係じゃなく、それに至るまでの道のりを知ることに意味がある。いやぁ、気づきがある映画だ、本当この作品は。

この学校を卒業した学生すべてが役に立っているかはわかりません。でも、生きる上で必要なことを楽しく学べるのは間違いないでしょう。きっとこの映画を観れば、あなたの生活も豊かに、今より暮らしに関わっていくようになるでしょう。家事って楽しい、素敵な毎日を。『<主婦>の学校』ぜひスクリーンでお楽しみください。
〈主婦〉の学校
( 監督:ステファニア・トルス/2020年/ アイスランド/ 78分)

上映スケジュール
11/13(土) - 11/19(金) 12:40~
11/20(土) - 11/26(金) 16:30~



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