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元町映画館☆特集

1964年、東京オリンピック あのとき、魔女が日本を変えた『東洋の魔女』

世界の強豪を次々に撃破し、その強さから「東洋の魔女」と呼ばれるようになった女子バレーボール代表

「東洋の魔女」をご存知ですか。1964年東京オリンピックを前後、世界の強豪を次々に撃破し、その強さから「東洋の魔女」と呼ばれるようになった女子バレーボール代表のことを指します。私も聞いたことはありました。それが女子バレーボール代表だということ。当時、とにかく強かったということ。そんな表面的、やんわり知識しか持ち合わせていなかった私にとっては強烈な映画でした。ドキュメンタリー映画『東洋の魔女』は、彼女たちの強さの秘訣。そしてその裏に見え隠れする1960年代の雰囲気を詰め込んだ作品です


こんなお話
料理屋に集まり、食事をする女性たち。そう彼女たちこそ、1964年東京オリンピックにおいて、最大のライバルだったソ連を打ち破り金メダルを獲得した元・女子バレーボール代表の選手たちです。
彼女たちはの大半は紡績工場で働く工員。試合に向けて、昼は仕事、夜は練習の毎日。「鬼の大松」こと大松博文コーチの指導のもとで結果を残し続け、そしてあの運命の日が訪れる……。

女子バレーボール代表たちの強さの秘訣、当時の練習がいかに激しいものだったのか。主にその2点が当時の試合の映像や彼女たちの練習風景をもとに描かれる。さらに彼女たちの奮闘がきっかけで作られたとも言われるバレーボールに熱中する学生を描いたアニメ『アタックNo.1』の映像の使い方も見事だ。過去だけでなく、「東洋の魔女」と恐れられた彼女たちの現在の様子も記録されている。ママさんバレーの指導者になったり、筋トレをするシーンなどその生き様に恐れ入る。

さて一見、ただの記録映画と思いきや、本作の魅力はそれだけではない。本作はフランス人のジュリアン・ファロという方が監督・脚本をつとめている。フランスから見た日本。。先に言っておく、日本人監督ではこんな映画にはなっていないように思う。もちろん例外はあるだろうが、本作はこのジュリアン・ファロ監督だからできたと言っても過言ではないだろう。

仕事の工員として、代表選手として、彼女たちは世間から求められる声に合わせて自分を変えていく。当時は代表として勝つことが全てだったように思える空気感は、今見れば異常とも思える。しかし勝つことによって彼女たちの生活が一応楽になるのも事実。だからこそ勝ちたいと願う選手は当時どんなことを思っていたのだろうか。本作でも彼女たちの口から当時のできごとが語られるが、果たしてどこまでが事実なのだろうか。練習の風景は今でいう「しごき」とも取れる、まさにスパルタ。
これがあったからこそ勝てたと思うこともできるが、その特訓の数々は本当に必要なものだったのかと考えさせられる。映像だけでも大変さが見て取れる。

そしてこの映画、見ている私たちの「疑う」という視点が求められる。勝つ瞬間。勝った瞬間はやっぱり感動する。でもそれまでに繰り広げられる「しごき」の数々は本当に必要だったのか。そんなことを考えさせられる映画だった。
東洋の魔女
『東洋の魔女』
(監督・脚本:ジュリアン・ファロ/2021年/フランス/100分)

上映スケジュール
2/19(土)~2/25(金)10:00~
2/26(土)~3/4(金)13:20~



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